大阪高等裁判所 昭和41年(ネ)1829号 判決 1969年9月12日
理由
控訴人が本件各手形を振出したことは当事者間に争いがなく、《証拠》を検するに、被控訴人は右各手形の裏書連続ある所持人であることおよび右各手形の振出日は昭和三九年七月三〇日と記載(補充)されていることが認められ、また弁論の全趣旨により成立を認め得る右甲号各証の付箋部分によれば、右各手形はいずれも満期に支払場所で呈示されていることが明らかである。
控訴人は、手形(2)につき、被控訴人の手形取得がいわゆる後裏書によるものである旨主張するが、かような事実は認められない。もつとも《証拠》を綜合すれば、控訴人から手形(2)の振出を受けた山下直造は(もちろん右手形の満期前に)、被控訴人に対し名宛人白地の裏書をしたうえ右手形を割引いてもらつたことが認められるのであり、同時にその後被控訴人は右手形を永井登に交付して譲渡し、永井において株式会社協和銀行に取立委任裏書をし、同銀行において満期に支払呈示をしたところ支払を拒絶されたので、右手形は同銀行から永井に、永井から被控訴人に返戻されたことおよびその際被控訴人において山下による裏書の被裏書人欄を自己の名称をもつて補充し、かつ自己の後者の裏書を抹消したことが窺われるけれども、だからといつて被控訴人の手形取得が後裏書によるものとなるわけではない。けだし被控訴人は、右により、満期前の手形取得者たる地位を回復したものにほかならないからである。控訴人は、後裏書によるものとなるとの点につき手形法七七条、一六条一項を援用するが、右規定は、いわゆる資格授与的効力を生じせしめる裏書連続の関係では、抹消した裏書は記載のないものとみなされるというに止まり、後裏書の成否とは関係がない。この点に関する控訴人の主張は採用できない。
手形(1)の元本につき昭和四一年三月末日五〇、〇〇〇円が弁済されたことは当事者間に争いがない。してみると控訴人は被控訴人に対し、手形(1)については元本一〇〇、〇〇〇円に対する昭和四一年一月一七日から同年三月末日まで七四日間年六分の割合による利息一、二一三円、残元本五〇、〇〇〇円およびこれに対する同年四月一日から支払の済むまで年六分の割合による利息の支払をなすべき義務があり、また手形(2)については元本二〇〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和四一年一月三一日から支払の済むまで年六分の割合による利息の支払をなすべき義務がある。ところで手形(2)の請求については原判決は右と結論を同じくするが、手形(1)の請求については原判決の結論は右と異るので、結局原判決は変更を免れない。